企業DX

製造業におけるDXとは?必要とされている理由や事例も詳しく紹介します!

「企業DXを推進する!と、会社の議題には上がっているけれど何から行えばいいかわからない」
と悩んでいませんか?

最近さまざまな会社で取り組まれているDXですが、いざ自分たちでやろうと思うと難しいですよね。特に製造業の方の場合、現場で生じている課題への認識はあったとしても、DXとなかなか紐づかない!そもそもDXについて詳しくわからない方もゼロではないでしょう。

今回は製造業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)について必要な理由や活用事例について詳しく紹介したいと思いますので最後までお読みください。

製造業におけるDXとは?

DXとは「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の略で、「デジタル技術を用いることで社会に大きな変革を与える」ことをいいます。

DXという言葉は、2004年にスウェーデンにあるウメオ大学の教授、エリック・ストルターマンが提唱。最初は学問で扱われた用語でしたが、IoTやAIがビジネスで扱われるとともに、DXもビジネス用語として扱われるようになりました。

IT化と似たようなイメージがあるかもしれませんが、少し意味合いは違います。IT化はITを導入して作業効率をよくすることです。一方でDXはITを導入したうえで社内や社外のシステムを大きく変えることです。つまり、IT化はDXを行う上でのひとつの工程にすぎません。

製造業の場合、ITを利用して工場や開発拠点のあらゆるデータを蓄積・管理し、生産性の向上や品質の安定につなげることがDXと言えるでしょう。

ただし、製造業におけるDXの定義は曖昧です。そのため、本記事ではものづくりにおいて欠かせない開発部門と製造部門だけでなく、営業部門や事務・総務部門も取り扱います。

製造業でDXが求められている5つの理由

製造業ではさまざまな理由でDXが求められています。主に5つあるので見ていきましょう。

求められている理由①:人材不足が深刻

製造業では人材不足の問題を解決するためにDXを行う必要があります。経済産業省が2018年に行った調査によると、94%以上の企業で人手不足が顕在化しており、約30%の企業でビジネスに影響が出ていると回答していたことがわかりました。

製造業で人材不足となっている理由はさまざまですが、主に

・国内の人口減少、転職者の増加による人材確保が難しくなった
・3K(きつい、汚い、危険)という工場勤務へのマイナスなイメージがある

などが挙げられます。

人材が不足していると、1人当たりの業務負担が増えかねません。そのため、DXを推進させることで、データ入力の自動化やAIによるデータ分析など、人が行わなければならない作業を減らすことが重要となっています。

求められている理由②:業務の高効率化

現在、生産性を高めるためにも、どの業務でも高効率化が求められています。

しかし、工場では日常の設備点検や生産量の記録、設備トラブルの記録などを紙で行っているところが多く、入力に多くの工数がかかっているのが現状です。

工場全体のデジタル化を実現し、より効率的に業務が遂行できるようにするだけでなく、入力したデータから適切な生産計画やトラブルの未然防止を行うことが望まれるでしょう。

また、激しい競争で優位に立つためにも、高効率化が求められます。開発部門ではCADやCAEを導入して開発期間が短縮されたように、今後も速いサイクルで新製品を短期間で開発できることが求められるでしょう。そのため、設計や試験に関わるデータの蓄積・活用が重要となっています。

求められている理由③:ノウハウの共有

独自の技術力を用いた製品作りのためには、ベテランのノウハウは欠かせません。しかしながら、人手不足や教育に割く時間が少ないことにより、若手社員がベテランの技術を学ぶことができていない問題があります。

高い技術力を継承するためにも、誰もが学習できる仕組みを作る必要があります。

DXではノウハウのデジタル化が可能です。データ化することで新入社員がベテランの知見にいつでも触れることができるようになります。そのため、全員が同じレベルでモノづくりを行うことができるようになり、高品質の維持や生産性の向上に繋げられるでしょう。

求められている理由④:現場力のみでの限界

日本はこれまで技術者が培ってきた現場力により世界トップの技術大国となっていました。しかし、世界中の企業との競争が激化しており、現場力のみでは太刀打ちできない状況になってきています。

特に日本では現場力が強い反面、ベテランの技術者でないとできない業務などがあり、属人化されている製造工程があることが問題となっています。もしベテラン技術者が会社を辞めて引継ぎが上手くできなかった場合、高い技術力が失われるかもしれません。

技術力の損失を防ぐためにも、属人的な技術のデジタル化が重大になっています。

求められている理由⑤:システム投資の遅れ

日本の製造業ではIT化が遅れています。理由として、ITの活用よりも現場力を重視している点が挙げられます。

ITコンサルティング会社のTOPWELLの調査によると、製造業1000社のうち、約7割の企業が経験と勘で製品開発を行っていることがわかりました。

一方、海外企業ではIoTの導入により、すでにさまざまな取り組みが行われています。ドイツでは2011年からビッグデータなどの活用を国家戦略で行い、デジタル化による人材不足の解消や技術力のノウハウ共有を進めています。

世界への遅れを取り戻すためにも、システム投資が急務となっています。

製造業DXを成功させるためには人材育成が大切

DXを推進していくうえでIT人材は欠かせません。ITの知識があり、膨大なデータを活用して課題解決を行うことができる人材が求められます。

しかし、製造業ではITに強い人材がほとんどいません。そのため、研修の実施やDXに必要な資格制度を設けるなどして、自社の問題をデジタルで解決できる人材を育成する必要があります。

ただし、教育だけでは時間がかかってしまい、推進が遅れてしまう場合があります。データサイエンティストなどDXに精通している人材を確保することも大切でしょう。

製造業におけるDXの事例を紹介(開発部門編)

製造業で実際に取り組まれたDXの事例を以下の4つの部門ごとに紹介します。

・開発部門

・製造部門

・営業部門

・事務・総務部門

まずは開発部門を見ていきましょう。

事例①:株式会社日立製作所

電機メーカーの日立製作所では、企業の研究開発部門向けに研究開発データ管理ソリューションを開発しました。論文や実験、調査などのデータを効率的に管理できるツールとなっています。

従来、研究データは組織や研究者ごとに管理していたため、別組織とのデータ共有が必要になった場合、USBなどの可搬記憶媒体でのやりとりをしなければならないなどの手間がかかっていました。

ソリューションを開発したことで、研究データを一元管理できるようになり、スムーズなファイル共有だけでなく、データへのアクセスが簡単にできるようになりました。

事例②:富士通株式会社

富士通では、FTCPという設計開発プラットフォームを作成し、設計開発データの管理が行えるようにしました。

これまで富士通では製品の多様化・複雑化、開発期間の短縮化などの開発に関わるさまざまな課題がありました。

設計開発における課題を解決するためにも、FTCPを構築。AIやCADの一部をオープンソースを活用し開発期間の短縮を行いました。また、ツールを長期的に使用するためにも、図面作成のルールや製品開発フローの整備も実施。

結果、製品開発の工程で手戻りの発生が減り、品質の向上や納期を短くできました。製造しやすい設計を以前よりも行いやすくなり、設計から製造までの工程で負荷が軽減されました。

製造業におけるDXの事例を紹介(製造部門編)

製造部門におけるDXの事例を紹介します。

事例①:トヨタ自動車九州株式会社

トヨタ自動車九州ではレクサスの完成車の車内異音を検査するAIシステムをDX支援会社スカイディスクと共同開発しました。

従来、異音検査はベテランの検査員が自身の耳で検査しており、検査員によって品質のばらつきが発生してしまうという課題がありました。

ばらつきを小さくするために、AIによる検査システムを導入。スカイディスクのAI分析技術を用いて、検査中の車内音をデータベース化し、ベテランの知見をAIに学習させました。

結果、AIによる車内異音検査を実現。品質の安定と属人化の解消ができました。

事例②:AGC株式会社

ガラスメーカーのAGCはAIソリューション会社FRONTEOと組み、AIを用いたQ&Aシステムを開発しました。

AGCではガラスの製造で独自の高い技術力を持っていますが、若手技術者へのノウハウ共有が課題となっていました。

そこで、質問に対してQ&Aデータから類似度の高い質問にひもついた回答を提示してくれるシステムを開発。回答できなかった質問はベテランに対して回答依頼を行い、データ収集を促し、回答できる質問を学習できるようなシステムとなっています。

導入した結果、月300件以上利用されており、技術共有に大きく貢献しています。

製造業におけるDXの事例を紹介(営業部門編)

営業部門におけるDXの事例を紹介します。

事例①:株式会社ダスキン

ダスキンの法人営業本部は営業支援をツール導入し、営業体制を強化しました。

これまで大企業にオフラインでの営業を行っていましたが、コロナ禍でリモート営業の必要性や在宅勤務での進捗状況の可視化のために、DXによる生産性向上を行う必要がありました。

検討した結果、これまで保有していた顧客データベースの機能を拡張し、1つのシステムで営業とマーケティングに関するデータ管理を行います。

名刺や日報、営業報告などの現場で使用するツールや、データを活用したマーケティング施策の活動状況などの一元で管理しました。

営業とマーケティングの部門間の連携がとれ、営業業務の改善が期待できます。

事例②:テスラ

電気自動車メーカーのテスラは2019年に多数の店舗を閉鎖し、オンライン販売に移行しました。そのため、スマホでも1分あれば簡単に自動車を購入できるようになりました。

店舗での試乗するという機会ができなくなってしまいますが、7日または1000マイル以内の使用であれば全額返金保証があるため、自分には合わないと感じても安心して返却することができます。

オンラインでの販売にシフトしたため、店舗コストが大きく削減。車の販売価格を6%下げることに成功しました。

製造業におけるDXの事例を紹介(総務・事務部門編)

総務・事務部門におけるDXの事例を紹介します。

事例①:日本特殊陶業

エンジンのスパークプラグなどを製造している日本特殊陶業は社内のお問い合わせ対応にチャットボットを導入。

社内で「働き方・生き方改革」を行っている中で、定型的なお問い合わせが多いという課題がありました。従業員が社内ポータルにある膨大な情報から特定の情報を見つけられなかったことが原因です。そのため、お問い合わせ対応をしている労務部は本来やるべき業務に集中して行えませんでした。

また、グループ会社の労務業務も本社に集約したいという課題があり、2つの課題の解決策としてHRチャットボットの導入を行います。チャットボットにより、人事に関するよくある質問を自動回答で対応できるようになりました。

結果、従業員からのお問い合わせ数が減り、業務負担を削減。人事部門と従業員のスムーズな情報共有もできました。

事例②:クミ化成株式会社

自動車内外装部品メーカーであるクミ化成が請求書の入力処理を自動化するソリューションを導入しました。

クミ化成では、総務や経理など企業の事務処理を行うために開発されたコンピュータを用いて会計をしていましたが、決算時の業務や伝票の入力などの経理業務で多くの課題がありました。

会計システムの再構築を検討し、新しく請求書に特化したAIシステムを導入。結果、決算時の残業時間を60%削減することができました。また、場所を気にせず申請から承認まで行うことができるようになり、在宅勤務やペーパーレス化も実現しました。

あなたの会社も製造業DXを始めませんか?

現在、さまざまな企業でDXが推進されています。IoTやAIなどの導入で、ノウハウの共有や業務効率化が実現し、会社や組織が大きな影響を与えるでしょう。世界中の製造業に市場で負けないためにもDXはとても重要な役割を持っています。

日本ではシステム導入が遅れているものの、すでに取り組んでいる企業もあり成果が出ている所も少なくありません。

もしあなたの会社にデジタルで解決できる課題があれば、是非DXに取り組んでみましょう。

(文:野田昂暉)

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