コラム

自治体DX

デジタル技術を駆使した変革(デジタルトランスフォーメーション、DX)が求められているのは、民間企業だけではなく、都道府県や市町村も同様です。

自治体DXの必要性

政府のビジョン「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会~誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化~」を実現するために取り組みが求められ、
自治体がデジタル技術を活用し、住民の利便性や行政サービス向上を目指す取り組みのことを言います。
また総務省の調査によると、2025年には75歳以上の人口が2180万人、20歳から64歳の人口が6635万人になると予測されており、予測数値のように高齢者が増加する一方で、労働力のある世代の人口は減少するため、
地域の生活に根ざした活動の維持が難しくなってくると想像され、自治体のDX導入は特に急務とされています。

自治体DX推進計画の重点取組事項

自治体DX推進計画において次の点を重点的に取り組むべき事項として挙げています。

引用:自治体DXの推進(総務省)

1・自治体の情報システムの標準化・共通化
行政業務において自治体によって取り組みの進み具合が異なるのが現状です。
全国の自治体のシステムを標準化や共通化させること、自治体の業務負担を減らし安定して住民に質の高いサービスを提供できるように取り組むこと


2.マイナンバーカードの普及促進
出張申請受付をおこなうなどマイナンバーカードの申請を促進し、臨時交付窓口や土日開庁の実施で交付体制を整えること


3.行政手続のオンライン化
マイナポータルの活用により、各種行政手続きをオンラインで実施できるようにすること


4.AI・RPAのAI・RPAの利用促進
国が作成するガイドブックを参考に、AIやRPAの導入・活用を促す利用推進すること

※「RPA(Robotic Process Automation)」とは、事務系の定型作業を自動化・代行するツールのことです。これまで手作業で行っていたルーチンワークを自動化できるので、業務効率の向上と人為的ミスの予防に役立ち、生産性の向上が見込めます。
一方で7AIは、人工的な知能を持たせた機械やソフトウェアを指します。ビッグデータ(巨大なデータ)を分析して自律的に判断するなど、人間と同じように分析・判断できます。
AIは単体で活用されることは少なく、他のソフトウェアに組み込まれて連携させることが一般的です。

5.テレワークの推進
国が提供するテレワークの導入事例やガイドブックを参考に、テレワークの導入・活用を促すること

6.セキュリティ対策の徹底
各自治体における情報セキュリティポリシーの見直しをおこない、情報セキュリティ対策を徹底すること

DX推進のための4つのステップ

自治体DX推進に取り組むための手順書・参考書として、総務省は4つのドキュメントから構成された「自治体DX推進手順書」を公表しており、「自治体DX全体手順書」には、自治体がDXを進めるうえで想定される一連の流れが以下4つのステップでまとめられています。

【ステップ0】DXの認識共有・機運醸成
ステップ0は、まだDXに取り組んでいない自治体に対して示されています。
特に、DXを速く・正確に進めるためには、「DXの実現に向け、首長や幹部職員によるリーダーシップや強いコミットメントが重要」です。

【ステップ1】全体方針の決定
ステップ1では、DX推進の全体方針をビジョン及び工程表から構成することが示されています。国は、DX推進のビジョンを「「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会~誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化~」としており、住民に身近な行政を担う自治体の重要性を指摘しています。

【ステップ2】推進体制の整備
ステップ2では、推進体制の整備を組織・人材の両面から検討する必要性が示されています。組織について、DX の司令塔としての役割を果たす DX 推進担当部門を設置すること、また各業務担当部門をはじめ各部門と緊密に連携する体制を構築することの重要性が指摘されています。

【ステップ3】DXの取組みの実行
ステップ3では、関連ガイドラインを踏まえて、DXの取組みを計画的に実行することが示されています。関連ガイドライン等には、「自治体の行政手続のオンライン化に係る手順書【第 1.0 版】」や「地方公共団体におけるテレワーク推進のための手引き」などが含まれています。

DX先進国

早稲田大学(電子政府・自治体研究所)が発表した「世界デジタル政府ランキング2021」(第16回)での1位はデンマークでした。
そのほか上位は、2位「シンガポール」(前年3位)、3位「英国」(前年4位)、4位「米国」(前年1位)、5位「カナダ」(前年8位)でした。

1位となったデンマークはどのような事を行っているのでしょうか?

デンマークでは早い段階で行政サービスのデジタル化が進んでおり、国民もオンラインで行政手続きを行うことに慣れていました。

1968年に開始されたデンマークの「CPR番号」システムがポイントです。
デンマークの国民には、一人ひとり異なるCPR番号が付与され、この番号に紐づけて生年月日、性別、居住地、学歴、職業等のさまざまな情報が登録され、社会保障や税金等の管理に用いられています。
そのCPR番号ですべて連携しているのです。

■口座
国民は政府に1つの銀行口座情報を届け出る必要があり、この口座が政府からの金銭給付に利用されます。
税金の払い戻し、育児資金や生活保護金などの社会福祉関連の受領用として、また給与の振り込みにも基本的にこの口座が利用されます。

■電子請求のデジタルインフラで、電子的に請求書などの文書の受け渡しを行うオンラインシステムが作られています。
公共機関のサプライヤなど、公共機関との取引では利用必須。見積もりの発行、請求書の発行、請求書に基づいた支払い、税金申告など、取引に関わる事項をシームレスにワンストップで処理できるようになっています。
これにより行政手続きに要する時間が平均で1〜2日減少しているとのことです。

■CPR番号に基づいて、個人の通院・治療・投薬の記録もWEB上で閲覧ができます。
専用のWEBサイトにアクセスし、二重認証を経ると自身の情報が閲覧可能です。
なんと、この医療記録システムが開始されたのは1977年と40年前だから驚きです。

■電子認証サービス「NemID」

NemIDとは、デンマーク政府が発行する電子署名、電子認証を行うためのIDサービスです。
オンライン上で行う手続きにおいて個人を証明するために使用します。

NemIDは、デンマークの国民番号(保健サービスや納税手続きに利用する)に紐づけられています。
日本でいう「マイナンバーカード」に近い存在ですが、デンマークでは国民番号は自動的に発行されますが、NemIDを使用するのには手続きが必要です。

そのNemIDの普及率は、前述の統計によるとデンマークの全国民の92%と高い水準です。

デンマークでは公的サービスへの支払い、行政手続きなどの公的なサービスから、親戚への送金、オンラインショッピングやインターネットバンキング、病院の予約などで様々な場面でほぼ毎日NemIDを使用されています。
現在スマートフォンのアプリを利用することでFaceIDやtouchIDなどでも簡単に行うことができ、とても利便性が高いのです。
またSecurityの高さで安全性が担保されています。

■93%以上の利用率を誇る「デジタルポスト」
公共機関からの連絡を電子的に受け取る電子私書箱として、国民全員に「Digital Post eBoks」が割り振られています。
政府からの各種連絡、年金や給与明細、医療機関からの定期検診・検診結果、保育施設や学校に関する地方自治体からの連絡、警察からの連絡などをメール形式で受け取れれます。

日本でのDX先進県

日本でも少しずつ地方からDXの波が広がってきています。

広島県
●2019年にDX推進本部を設置
DX推進本部にて、3つのDXに取り組んでいるそうです。
①仕事・暮らしのデジタル化:産業の領域でのDX
②地域社会のデジタル化:スマートシティ構想
③行政そのもののデジタル化

また広島県ではモノづくりという強みを生かし、他県に先がけて産学官連携によるモノづくりのDXを進めています。例えば、県内企業がいつでも様々なチャレンジができる場「ひろしまデジタルイノベーションセンター 」を2018年に設置したり、デジタル技術を使って、土木や農林水産、スポーツ分野といった行政課題や地域課題の解決に取り組むプロジェクト「ひろしまサンドボックス 」を推進したりして構築しています。

オープンな実証実験の場「ひろしまサンドボックス」

広島県庁舎の外観

愛媛県
2018年にプロモーション戦略の一環として、デジタルの活用を開始しています。
また同年4月、全都道府県で初の取り組みとして、県庁内にプロモーション戦略室デジタルマーケティンググループを設置しています。
最初はインバウンド用から始めて、行政が関連したデジタルプロモーションの例としては以下がります。

・愛媛百科選
ECとデジタルマーケティングによる県産品の販売促進を目的に、県産品をアピール・販売するサイトとして作られ、個人に加えBtoB取引の活性化も目標としています。サイト内には、地域産品のブランディング施策の一環として動画が公開されています。楽天市場内には、愛媛県の特産品を取り扱う特設サイト「愛媛百貨店」をオープンし初年度での売り上げは、目標を上回る約4億円に達しました。

・Visit Ehime Japan
インバウンド誘客のために作られたサイトで、初年度には「サイクリング」や「お遍路」の動画、次年度には「フィッシング」や「祭り」の動画の新規配信などを行い、ターゲット7カ国・地域で1年間で、4,000万回視聴されています。

また愛媛県の自治体が一体となって取り組むことを県内外にアピールするため、県や市町が、県内事業者などのDXを積極的に支援する姿勢を明らかにするために、県と20市町が協働してDXを推進していくという宣言を行っています。

今後、どんどんがDXの波がくるでしょう。
デンマークの先進事例から学ぶ自治体DXの姿にもヒントはたくさんありそうです。
構築していくとで、広島県や愛媛県のように実績はでてきます。
小さなことから始めるのが大切だと思われます。

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