コラム

2023年のAI市場の展望や予測

各会社や様々な著名人が2023年のAI市場の展望や予測をリリースしてみます。
今回は、その関連した内容をまとめてみたいと思います。

2023年サイバー脅威を取り巻く環境について

ウィズセキュア株式会社(出所)

発表された予測は以下のとおりです。

1.自然言語生成モデルがサイバー攻撃者に利用される(AndyPatel(アンディ・パテル)氏)

偽物のNGO・シンクタンク・政策関連サイトなどが含まれるそうです。

2.セキュリティ侵害を通じて、機械学習モデルを盗み出そうという試みが増える(AndyPatel(アンディ・パテル)氏)

システムのセキュリティが侵害されると、悪意を持った攻撃者による不正アクセスなどによって、システムの動作妨害・不正利用・情報漏洩などが引き起こされます。
今後、AI関連のサービスが増えれば増えるほど、AIモデルの流出や盗難が増えることが予想され、AIによる音声模倣技術が容易に利用できるようると予想。

3.クラウドに特化した攻撃が主流に(LeszekTasiemski(レシェック・タシエムスキー)氏)


インターネット経由でアクセスできるデータセンター内のストレージにドキュメントや画像、動画をはじめ、あらゆるファイルを保存・管理できるクラウド。
情報通信研究機構(NICT)の調査によると、サイバー攻撃に関連する通信がこの10年間で66倍も増加しています。
クレジットカード情報入力ページが攻撃者によって改ざんされ、その情報が攻撃者に漏れたりする等の危険性も大きくなります。
今後はクラウドインフラの弱点/設定ミス/脆弱性などを狙ったクラウドに特化した攻撃が増加していくでしょうとのこと。

4.データ処理に必要な電力は、サステナビリティの枠において象のような存在となる(LeszekTasiemski(レシェック・タシエムスキー)氏)


データ通信やクラッキングに多くのエネルギーが必要であることを忘れてしまいがちです。
2021年には暗号通貨関連を除いても約600TWh(テラワット時)の電力が消費されました。企業や個人は、消費電力を削減する方法を模索することになるでしょう。

5.2038年問題は思っているより早くやって来るため、今から準備が必要(TomVandeWiele(トム・ヴァンドゥウィール)氏)


2038年1月19日3時14分7秒を過ぎると、コンピュータが誤動作する可能性があるとされる年問題。
古い設計のシステムが採用している日付と時刻の標準データ形式が定義上の上限値を超えてしまうために起きると予測されいます。
例えば、契約の終了日の計算、大きな買い物をした場合や産業界における保証の有効期限など、2038年が既に問題となるであろうものなどです。

6.マルウェアによる攻撃キャンペーンは、人間のスピードから機械のスピードへと移行する(MikkoHypponen(ミッコ・ヒッポネン)氏)


正な電子メールの書き換え、不正なWebサイトの登録と作成、検知を回避するためのマルウェアコードの書き換えやコンパイルなどの技術が含まれるようになると考えられます。

AIに関するエキスパートの予測

NVIDIA(出所)※一部抜粋

◯アニマアナンドクマー(AnimaAnandkumar)氏
気象や気候モデル、地震現象、材料特性など、複雑でマルチスケールな物理プロセスの大規模な※デジタルツインが登場するでしょう。
※デジタルツイン(DigitalTwin)とは、現実の世界から収集した、さまざまなデータを、双子であるかのように、コンピュータ上で再現する技術のことです。

◯ジェネラリストAIエージェント:氏
AIエージェントは、自然言語指令と大規模な強化学習を使用して、オープンエンドのタスクを解決するようになります。

◯マヌバーダス(ManuvirDas)氏
エンタープライズコンピューティング担当シニアバイスプレジデント
ソフトウェアの進歩により、企業はすべてのインフラストラクチャタイプでAIパイプラインを統合し、つながりのある単一のエクスペリエンスをAI実務者に提供できるようになります。これによって企業は、プロジェクトの規模や複雑さに関係なく、コストと戦略目標のバランスを取ることができ、事実上無制限の能力にアクセスして柔軟な開発ができるようになります。
※ジェネレーティブAIが話題となっていますが、それが2023年に現実のものとなります。なぜなら、大規模言語モデルとレコメンダーシステムを実稼働アプリケーションに変換できるソフトウェアを用いた、真のジェネレーティブAIの基盤がようやく整ったためです。実稼働アプリケーションでは画像に留まらず、質問にインテリジェントに回答し、コンテンツを作成し、驚きの発見をすることさえできます。

※生成系AI(ジェネレーティブAI:GenerativeAI)とは、クリエイティブかつ現実的な全く新しいオリジナルのアウトプットを生み出す人工知能(AI)のことで、具体的には新しいデジタルの画像や動画、オーディオ(音声/音楽など)、文章やコードなどのテキストを生成するAI、もしくはこれらを組み合わせて生成するAIのこと

◯キンバリーパウエル(KimberlyPowell)氏
大規模言語モデルのブレイクスルーと、文字のシーケンスで生物学を記述する幸運な能力により、研究者は化学と生物学の新しいクラスのAIモデルをトレーニングすることができます。これにより半導体で分子とタンパク質の特性と相互作用をすべて生成、表現、予測することができ、潜在的な治療法における最も重要な無限の領域を探索する能力が拡大します。

◯ダニーシャピロ(DannyShapiro)氏
自律走行車を開発している250以上の自動車メーカー、トラックメーカー、スタートアップ企業、輸送機関、およびサービスとしてのモビリティ(MaaS)を提供するプロバイダーが、現代のAIにおける最も複雑な課題の1つに取り組んでいます。対処できなければならないすべてのシナリオに、路上でのテストで遭遇することは不可能であるため、2023には業界の多くの企業が仮想世界を利用することになるでしょう。
車両生産のためのデジタルツインも引き続き導入が進むでしょう。このデジタルツインにより、製造効率の改善、運用の合理化、労働者の人間工学および安全性の向上が実現します。
また対話型AI、自然言語処理、ジェスチャ検出、アバターアニメーションの進歩が、デジタルアシスタントの形で次世代の自動車に採用されています。このコンシェルジュは、自然言語理解を用いて、予約、車両制御へのアクセス、アラートの提供を行うことができます。車内カメラ、ディープニューラルネットワーク、マルチモーダルインタラクションによって、車両はドライバーの注意が路上にあることを確認でき、走行後に降車した際に同乗者やペットの置き去りを防ぎます。

※MaaS(マース)とは、近年、5Gや拡張分析などと並んでテクノロジーのトレンドとして世界で注目されているMaaS。Mobility as a Service(モビリティ・アズ・ア・サービス:サービスとしての移動)。バスや電車、タクシー、飛行機など、すべての交通手段による移動を、ひとつのサービスでシームレスに完結させ、人々の移動の利便性を上げるサービスのこと、

◯レヴレバレディアン(RevLebaredian)氏
HTMLが2Dウェブの標準言語であるように、UniversalSceneDescriptionは3Dウェブにおける最も強力で拡張可能性のあるオープン言語になるでしょう。メタバースの仮想世界を記述するための3D標準であるUSDにより、企業や一般消費者でさえ、各種ツール、ビューアー、ブラウザーを使用して、最もシームレスかつ一貫した方法で異なる3Dワールド間を移動できるようになります。

◯ロニーヴァシシュタ(RonnieVasishta)氏
5GネットワークによるAR/VRの無線化で店舗の棚の補充、フロアの清掃、ピザの配達、工場内での商品のピッキングと梱包といった用途で、コネクテッドロボットが業界の垣根を越えて迅速に導入されるきっかけにもなります。

◯ボブペティ(BobPette)氏
多くの企業がハイブリッドワークにまつわる課題に対応しようと文化やテクノロジの順応に奮闘したように、2023年には多くの企業において全社的なITインフラストラクチャの再構築が実施されるでしょう。企業は、増え続けるアプリケーションや複雑なデータセットの需要に対応できる強力なクライアントデバイスを模索し、柔軟性を受け入れて、急激なスケーリングに対応できるようにクラウドへの移行を急加速させます。

◯アジータマーティン(AzitaMartin)氏
非接触型レジにAIベースのサービスを採用する企業が増える中、コンピュータービジョンと店舗分析データを組み合わせて、買い物客がレジに打った商品と実際に購入した商品が同じであることを確認する高度なソフトウェアが求められるようになります。スマートな自己追跡テクノロジの採用により、完全に自動化された店舗体験の開発が可能になり、労働力不足と利益損失の解決に役立ちます。

◯マルコムデマヨ(MalcolmDeMayo)氏
金融機関は、アクセラレーテッドコンピューティングなど、効率化を促進する有利な条件を模索するでしょう。デしょう。その結果、銀行は可能な場合にはサポート契約を結ぶことが義務づけられます。

◯マルコムデマヨ(MalcolmDeMayo)氏
2023年には、並列処理に対応していない非効率的なx86ベースのレガシーコンピューティングアーキテクチャが、言語モデルやレコメンダーなどの構築に必要なコンピューティング性能、スケール、効率を提供するアクセラレーテッドコンピューティングソリューションに取って代わられます。

◯デビッドリベル(DavidReber)氏
攻撃と防御のスピードと複雑さが実質的に人間の能力を超えているため、従来のサイバープロフェッショナルは最も高度な脅威に対して有効な防御をすることができなくなっています。
データサイエンティストたちや他の分析担当者たちは、AIを使用することで、すべてのデータを客観的に見て脅威を発見するようになります。データ侵害は今後も発生するものであり、AIと人間によるデータサイエンス手法によって、発見が困難な侵害を検出して迅速に対応することができます。

◯カリブリスキ(KariBriski)氏
A大規模言語モデル(LLM)に関する研究は、言語やテキストや画像を有益なインサイトに変換できる、実用性の高い新しいタイプのアプリケーションにつながります。
コールセンターに注目してください。実装がさらに容易になった音声AIワークフローが採用され、モデルアーキテクチャの変更から独自データのモデルの微調整やパイプラインのカスタマイズまで、顧客とのやり取りにおけるあらゆるステップにビジネスの柔軟性がもたらされます。音声AIワークフローへの利用可能性が広がるにつれて、採用する企業が増加し、解決までの時間が短縮されることで、コールセンターの生産性が大幅に向上するでしょう。AIによって、エージェントは膨大なナレッジベースから適切な情報を適切なタイミングで引き出すことができ、顧客の待ち時間を最小限に抑えます。

◯ケビンデアリング(KevinDeierling)氏
CPUの設計が物理法則に反してムーアの法則(マイクロチップ上のトランジスタの数は約2年ごとに2倍になり、より高速で効率的な処理が実現するという仮定)に追いつかなくなっている現在において、アクセラレーテッドコンピューティングに移行する企業が増えていきます。CPU、GPU、DPUなどをカスタムに組み合わせてスケーラブルなデータセンターで使用することで、より迅速にイノベーションを進めながら、クラウド指向が強まりエネルギー効率が向上します。

◯ディープゥタッラ(DeepuTalla)氏
フォトリアルなレンダリングと正確な物理モデリングが、クラウドのGPU上でロボットの何百万ものインスタンスを並行してシミュレーションする機能と組み合わさり、仮想世界でトレーニングされるロボットが増えるでしょう。ジェネレーティブAIテクノロジにより、非常にリアルな3Dシミュレーションシナリオの作成が容易にできるようになり、さらに高性能なロボットを開発するためのシミュレーションと合成データの採用がこれまで以上に加速していきます。
ほとんどのロボットは、人間の活動が制限されている、制約のある環境で動作しています。エッジコンピューティングとAIの進歩により、ロボットは環境の意味の理解を深めるためにマルチモーダルな認識を行えるようになります。これにより既存の施設や、小売店、病院、ホテルなどの公共スペースで動作するロボットの採用が進むことになるでしょう。

◯マークシュピーラー(MarcSpieler)氏
AIを活用したエネルギーグリッド:分散型エネルギーリソースがこれまでにない速度で増えており、グリッドがより複雑になる中、電力会社は、運用効率を改善し、機能安全を強化し、負荷と需要の予測の精度を高め、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの接続時間を短縮するために、エッジAIを必要とします。エッジでのAIにより、エネルギーの無駄とコストが削減され、グリッドの回復力が向上します。

その他の展望、予想

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日本語も理解する対話型AI登場、2023年はAIが世の中を本格的に変え始める年に

2023年の戦略的テクノロジートレンドは「メタバース」「適応型AI」など

AIが加速度的に進化して、その驚異的な能力を世界に見せつけてきていますが、2023年のAIの展望や予測から見ると、さらに進化しそうです。
人間の創作を超えるさまざまな新しいコンテンツが誕生するかも知れません。

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